勤務医コラム・47
総論と各論
中島 公洋
1
1慈仁会酒井病院外科
pp.478
発行日 2013年4月20日
Published Date 2013/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104546
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- 文献概要
今から20年前,寝る暇もないほど忙しい毎日であったが,仕事ばかりやっていたらおかしくなると思い,週に1回30分だけギター教室に通った.11年間通った.はじめの頃,まわりは中高生ばかりだったのに,だんだん中高年が増えてきて,しまいには私が中堅クラスになってしまった.今から9年前,この病院に来た頃は入院患者は若かった.一般病床50床の入院患者平均年齢は,平成17年12月に66歳だったのが,平成24年12月には74歳になった.わが国の人口構成が逆ピラミッド型になった今,増え続ける医療費介護費にどこでストップをかけるか,それが大問題だ.生命の尊さ・患者のニーズという「錦の御旗」が存在し,そこに病院組織維持・雇用維持という「incentive」が働いて,医療者発の医療費増大を招いてはいないか? 寄ってたかって介護してはいないか? 大病院にいる若い先生方がこれまで通り積極的にやっていくのはよいが,地域に居る中堅以上の勤務医は,一歩手控えてやっていくべきではなかろうか.今のままではいけない.検査を減らし,処方を減らし,受診回数を減らそう.
そう考えていたら94歳の閉塞性黄疸患者が入院してきた.総論としては「何もしない」が正解だろう.しかし,それでは収まらぬのが浮世の難しいところ.総論と各論は違うのだ.PTCDをした.患者も家族も喜んでくれた.しばらくしたらEMSだろう.お金がかかる.本当にこれでよいのか,悩みは尽きません.
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