勤務医コラム・41
六道の辻
中島 公洋
1
1慈仁会酒井病院外科
pp.1269
発行日 2012年10月20日
Published Date 2012/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104254
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今年のゴールデンウィークは,医者になって30年目にして初めて日当直のない4連休となった.実は2回入っていたのだが,若い先生に無理を言って交替してもらい,旅行へ出かけた.学会がらみではない普通の旅行など何年ぶりだろうか.ちょっと思い出せない.
京都へ行った.混雑することはわかっていたので,できるだけ人出の少ない小さな寺々を廻ることにした.毎日病院にいる身としては,昼間からこういう場所をのんびり歩くのは,異空間にいる感じがして心地良い.その異空間の中に東山鳥辺野の六道珍皇寺はあった.平安時代のはじめ,小野篁(おののたかむら)という頭脳明晰なお役人がいて,昼間は朝廷へ出仕し,夜はこの寺の井戸伝いに冥界へ下って閻魔大王に仕えていた,とのこと.さしずめこの寺は,あの世とこの世との境―六道の辻―にあった,ということらしい.
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