ひとやすみ・89
海外留学の勧め
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1136
発行日 2012年9月20日
Published Date 2012/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407104212
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- 文献概要
韓国や中国から米国への留学生が激増しているのに反して,日本からの留学は激減している.「言葉の壁があるから」「国内での臨床や研究から離れるから」「給料が安いから」「そもそもアメリカから学ぶことがないから」など,種々の理由が挙げられる.しかし,最も欠けているのは「貪欲に何でも見てやろう,経験してみよう」というハングリー精神が現代の若者に欠落していることに起因していると私は思う.
私は27年前に,1年間の短期間であったが,ドイツのハイデルベルク大学に内視鏡治療を学びに留学したことがある.当時,すでに日本製の内視鏡が世界を席巻し,EMRやESTなどの先進的治療も国内で行われていた.しかし,ドイツでは食道静脈瘤硬化療法,肥満に対するバルーン留置,胃瘻造設術などの内視鏡的治療が積極的に行われ,すでに内視鏡外科として独立していることにまぶしさを感じた.腹腔鏡下虫垂切除術も行われていたが,ドイツ国内でも特殊な技術を有する外科医の特異な手術とされ,完全に無視されていた.私自身も関心を持ったが,とても自分自身ではできない特殊な手技であると思った.しかし,医療機器や技術の進歩に伴い,1989年以降は腹腔鏡下手術が爆発的に世界中で普及した.私自身が腹腔鏡下手術に取り組んだのは1991年であり,画期的な外科手術の萌芽期に臨みながら遅れをとったことが非常に残念である.
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