昨日の患者
情熱を持ち続ける
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.71
発行日 2011年1月20日
Published Date 2011/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103385
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- 文献概要
趣味が高じて趣味で生活の糧を得られれば,人生は最高である.しかし,最高の人生を送れる人は稀で,夢で終わることが多い.しかし,苦労しながらも夢を追い求め続ける人も稀に存在する.
70歳代半ばのIさんが肝囊胞症で入院した.腹腔鏡下に開窓術を行い,術後2日目に退院した.退院時に,病室に掲示されていた元患者さんが描いた絵画を見て語ってくれた.「子供の頃から絵を画くことが好きで,親に反対されながらも高校を中退して東京に出ました.しかし,絵で生活することは困難で,蕎麦屋の出前などで生活費を稼ぎました.東京での生活は破綻して故郷に戻りましたが,好きな絵を書き続けてきました.あまり絵は売れずに家族に苦労をかけてきましたが,県立美術館に私の絵が収蔵されています.ご案内しますから,ぜひ見てください」そこで,翌々日の土曜日に県立美術館で会うことにした.
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