ひとやすみ・66
学生時代との決別
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1517
発行日 2010年11月20日
Published Date 2010/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103316
- 販売していません
- 文献概要
私が勤める病院は仙台市内とはいえ,伊達政宗の居城であった青葉城の後背地に存在する.高台に立地するため,病室からは東に朝日が昇る太平洋を,そして西には夕日に映える蔵王連峰を望むことができる.この蔵王連峰を眺めると,懐かしい青春時代が思い出される.
学生時代は弓道部に籍を置いていたが,ワンデリングクラブにも準会員として所属し,暇を見つけては近くの山々に登った.そして医学部6年生の10月に学生時代最後の思い出として蔵王連峰の縦走を思い立った.土曜日の授業を終え,教科書をロッカーに押し込み,代わりに用意していたリュックサックを背負った.そして仙山線に乗り込み,県境を越えた山形県側の面白山高原駅に降りた.唯一人,スキー場のリフトの下を歩き,そして全山が紅葉した面白山に登った.また,蔵王連峰の北側に位置する面白山から二口峠へと縦走した.日が暮れかけた頃にリュックサックを置き,簡易コンロで沸かした湯をカップラーメンに注いだ.缶詰の魚をおかずとし,キュウリを齧り,リンゴをデザートとした.そしてハイマツの陰でシュラフに潜り,満天の夜空を眺めた.空には無数の星が輝き,下界には町の光が見えた.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.