書評
四元秀毅,山岸文雄(著)「医療者のための結核の知識(第3版)」
渡辺 彰
1
1東北大加齢医学研・抗感染症薬開発研究部門
pp.1064
発行日 2009年8月20日
Published Date 2009/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102653
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結核はなぜなくならないのか? それどころではない! 結核は過去の疾患ではなく,わが国にとってはいまだに大きな問題を孕む感染症である.年間2万数千人が新しく結核を発症して2,000人前後が死亡しているのである.近年,結核罹患率(=新規患者の年間発生率,人口10万対)はようやく20を割ったが,これは先進国の北欧諸国や米国の5倍前後と高い.すなわち,わが国は決して結核対策の先進国ではなく,東欧圏などと同じレベルの中蔓延国なのである.疫学的背景としては,わが国の人口構成で高齢者が急増していることの影響が大きい.過去の高蔓延時,若いころに感染して発病せずにいたが病巣を抱えている潜在性結核が高齢者に多く存在し,そこから多数の発症が起こるとともに,結核免疫の脆弱な若年層がそれをもらって集団感染を起こすという構図が最近顕著になっているのである.若手医療者もまったく同様であり,診断のつかないまま一般医療施設を受診する結核菌排菌患者に遭遇する機会が増えている現在,若年看護師を中心とする職業感染としての結核集団発生も多い.結核は感染・発症するとその人にとっては一生続く一大事となるのであり,一般の医療職もここでもう一度「結核」を学んで対応策をしっかり考えたい.
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