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癌治療において根治性を規定する最も大きな要因は,適正な癌の切除範囲とリンパ節一括郭清である.前者の切除範囲は癌の局在や大きさ,肉眼型や組織型などによって規定されるが,術前・術中診断と組織学的な浸潤との乖離を考慮しなければならない.これまで,どの領域の癌であっても,多数の症例蓄積のなかから定型術式が確立され,治療成績の向上に大きく貢献してきたことは事実である.しかし今日,診断学の進歩によって小さな癌や早期癌が増加し,その生物学的特性が明らかになるにつれ,癌治療はきわめて多様化してきた.特に内視鏡的治療の進歩・普及は従来の外科の概念を変えるほどのブレーク・スルーの1つである.内視鏡関連のendoscopic mucosal resection(以下,EMR)やendoscopic submucosal dissection(以下,ESD)の登場によって,それらの病変に対する癌の至適切除範囲のあり方が問われている.また,進行癌においても自動吻合器をはじめ様々な医療機器が開発され,従来の進行癌における切除範囲の考え方も再考を求められている.さらに,open手術におけるsurgical marginに関しても上皮内進展・脈管侵襲や副病変に対する術前・術中の診断法のあり方がますます重要となっている.
切除範囲の妥当性は根治性と機能温存との相反する両者の観点から決定されるが,ただ残存する臓器を大きく残すことが必ずしも機能温存に寄与するとは限らない.術後の生理機能を十分に理解したうえで切除線を決定する必要がある.切除断端の評価は断端に癌の浸潤を認めるか否か,近位断端(proximal margin),遠位断端(distal margin),水平断端(lateral margin),垂直断端(vertical margin)における3次元の観点から診断する必要がある.
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