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本誌60巻9号(2005年9月号)に掲載された「外科学の生い立ちとその進展」という拙筆から連載企画「外科学温故知新」がスタートし,先月の63巻6号(2008年6月号)が最終回となった.思い返すと,群馬大学の桑野博行教授が「53の会」(全国の昭和53年卒の外科医の集まり)の席上,「外科学の魅力を若い人たちにアピールすべく,また,1人でも多くの若者に外科学に興味を持ってもらうために,外科学の歴史的発展の過程を専門分野別に分担して書いてはどうか」と提案したことから始まった足掛け3年の連載であった.そして,この連載が始まるに際して「53の会」のなかで多分唯一の医史学会員である不肖佐藤が,医学全般の歴史にも詳しいであろうということから,歴史的な事項を補足すべくコラムを書くという役目を仰せつかった次第である.
そこで,どのような締めの文にしようかと思案していたところ,文藝春秋社刊行の「すごい言葉―実践的名句323選(春山陽一著)」という新書にめぐり合った.この本には,著者曰く“隠れた”古今東西の名句が収められているのであるが,その「歴史について」の項に紀元前一世紀頃のギリシャの歴史家ディオニュソスの言葉として,「歴史は実例によって教える哲学である(History is philosophy teaching by examples)」という一言が挙げられていたのである.この言葉を目にして,本連載のタイトルに取り入れられている「温故知新」という言葉に相通じるものを感じた.ご存知の方も多いと思うが,「温故知新」という文言は孔子の「論語(為政篇)」のなかにある一節で,通常は「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知れば,以って師と為るべし」と訓読され,その意味するところは「歴史や昔の思想や文献・古典籍などを知って研究することにより,新しい知識や見解を得ることができ,将来にむけての展望が開ける」ということである.
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