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本誌の新連載「外科学温故知新」の開始にあたり,その第1回として「外科学の生い立ちとその進展」1)を執筆させていただいたところ,ある読者から貴重なご指摘をいただいた.具体的には,Billrothの偉業を紹介する部分で呈示した,現在はウィーン大学医学部附属医学博物館に展示されている胃標本の説明に関してである.この論文で筆者はLeskyの著書に載っていた標本写真を転載したのであるが,autopsyで得られた胃標本の中央部に弧状にみられる縫合線を,あまり深く考えることなしに,これまでどおりに「Lembert縫合でなされた完璧な残胃十二指腸吻合」と説明した(1159頁の第10図).
さて,図1はこの医学博物館が発行しているガイドブックに載った胃標本写真であるが,Wölflerの報告によれば,残胃と十二指腸を“oralis superior”で吻合再建したのであるから,注意深く観察すればこれが吻合部であるわけがない.この写真では右側が食道で,左側の切開によりその内腔がみえているのが十二指腸である.はっきりとは確認できないが,十二指腸から胃へ移行するあたり(図1の矢印)が吻合部になるものと思われる.これに関して,その読者の方から貴重かつ重要な文献2,3)をご教示いただいたのである.図2として掲げたのが,Wangensteen論文2)に掲載された説明図であり,これでは吻合部が「→」でもって“(Anast.)”と示されている.また,図3はZiegler論文3)に掲載された図であり(コピーを重ねているのでわかりにくいかと思うが),標本の呈示方向がWangensteen2)のものと逆向きであるが,これでは残胃と十二指腸との吻合部が“(A)(=Anastomose)”として示されている.
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