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1.腹会陰式直腸切除術を創始したMiles
直腸癌に対する外科治療に関しては,1826年にフランスの外科医Lisfranc(1790~1847年)によって報告された会陰アプローチによる切除がその嚆矢とされ,その後,数十年間にわたってこの術式が直腸癌に対する外科手術として行われてきた.1884年にドイツのCzerny(1842-1916)がはじめて腹腔側と会陰側からアプローチをする,いわゆる「腹会陰式直腸切除(abdomino-perineal excision)」を行っているが,その結果は惨憺たるものであった.
このような状況下に,今日「Miles手術」と呼ばれている系統的な腹会陰式直腸切除術を確立したのがイギリスのErnest Miles(1869~1947年:図1)である.Czernyを嚆矢とする従来の腹会陰式直腸切除術はその術死率が非常に高かったため,Milesは自身が工夫した「会陰式の直腸切除」(perineal excision)を行っていたが,この手術ではどうしても上方,すなわち上直腸動脈から下腸間膜動脈に沿ったリンパ系への拡がりに対するアプローチ(リンパ節郭清)が不十分であった.そこで,St Bartholomew病院の病理部で特に直腸癌とその進展について研究したMilesは,「より安全に」かつ「確実な」リンパ節郭清を行い得る「腹会陰式直腸切除術」(abdomino-perineal excision)を開発するに至った.この論文は1908年のLancet誌に「A method of performing abdomino-perineal excision for carcinoma of the rectum and of the terminal portion of the pelvic colon」と題して発表された.術式(手術手順)は現在われわれが行っているMiles手術と変わらず,言い変えれば,われわれがMileの原法を踏襲しているのであえて紹介しないが,Milesがこのような手術を開発するに至った過程がこの論文に述べられているので,これを要約して紹介したい.
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