診断のポイント
直腸癌
伊藤 一二
1
1国立がんセンター外科
pp.540-542
発行日 1969年5月10日
Published Date 1969/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402202650
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痔核・大腸炎の誤診が多い
直腸癌の大半(78%)は歯状線より10cm以内の所に発生し,したがって直腸指診のみで容易に診断をつけうる比較的診断しやすい癌であり,また胃癌などと異なり,限局的に発生するものが多いため,根治の希望の高い癌の1つである.事実,リンパ節転移を認めないDukes分類のAおよびBでは術後5年生存は80%以上の好成績が得られている.
しかし現状では必ずしもこのような早期に発見されるとは限らず,われわれの統計をみても,直腸癌手術例の57%にはすでにリンパ節転移が認められ,また17%の高率に手術時すでに肝転移が認められており,これら進行癌の予後はきわめて不良である.したがって,手術による根治度の高い直腸癌をより早期に発見する手段および体制を確立することが急がれるわけである.特に重要なことは,直腸癌患者が比較的早期より直腸肛門に関する症状を訴えて医師を訪れているにもかかわらず,簡単な検査法を怠ったため,痔核あるいは大腸炎と診断され,あたら早期発見の時期を失した症例がわれわれの統計でも40%にみられたことで,今後医師側として大いに反省すべきことであろう.以下われわれが日常行なっている診断方法を簡単に述べる.
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