外科診療に潜むピットフォール―トラブル回避のためのリスクマネジメント講座・1【新連載】
検査なしの長期処方で胃癌の発見が遅延した事例
山本 貴章
1
Takaaki YAMAMOTO
1
1東京海上日動メディカルサービス株式会社
pp.519-522
発行日 2008年4月20日
Published Date 2008/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102098
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外来で多くの患者の診察をしているとさまざまな場面に出くわします.最良の結果に感謝されることもあれば,納得のいかない結果に小言をいただくこともあります.医師として患者のことを思ってやったことがかえってあだとなり,トラブルになることもあります.外科診療であれば,外来に加えて侵襲を伴う検査や手術という医療行為を通して疾患に対峙していくこととなりますが,そのなかには幾多の危険が潜在し,懸命に治療を進めていても不幸な結果に終わってしまうこともあります.そのような場合,医療者側が医学的見地から合併症と考えていても,患者側の目には医療過誤,技術的過失と映ってしまい,トラブルに発展する事例が急増していることは広く知られている通りです.さらに,医療事故に対する司法判断も時代とともに変遷し,現在では医療者側に厳しい判断が下されることも少なくないようです.より安全で確実な医療を提供していくためには,厳しい臨床の現場に従事する外科医にこそ多くの事例に関する情報を正確に把握でき,患者側の考え方,事故に対する司法判断についても十分な知見を得ることができる環境が用意されるべきではないでしょうか.
本連載では,さまざまな臨床の場面で発生したトラブルについて紹介し,解説させていただく予定です.多くの事例とその経過や評価を伝えることで,外科臨床の現場で活躍されている先生方のトラブル回避の一助になれば幸いです.
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