連載企画「外科学温故知新」によせて・18
血圧測定の歴史
佐藤 裕
1,2
Hiroshi SATO
1,2
1誠心会井上病院外科
2日本医史学会
pp.515-518
発行日 2008年4月20日
Published Date 2008/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102097
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1.はじめて血圧を測ったStephen Hales
1628年にハーヴェイ(William Harvey:1578~1657年)がガレヌス学説を打破する血液循環説を唱えて以後,イギリスにおいては血液循環を中心にした生理学研究が盛んになるが,その一端が動物における血圧測定の実施であった.その動物の血圧に関心を持って最初に血圧測定を試みたのがイギリスのステファン・ヘールズ(Stephen Hales:1677~1761年:図1)であり,1706年にイヌにおいてはじめて血圧の測定を試みた(このときの測定方法ははっきりしない).1711年に至り,生きているウマの動脈に真鍮製の管を直接挿管し,それにガラス管を接続して血圧(正確にはガラス管内の血液柱の高さ)を測定したのであったが(図2),当初,ガラス管内を八フィートの高さまで血液が上昇したと言われている.このとき,失血(脱血)させていくにつれてウマの血圧が低下していくことも確かめている.この生体実験が直接血圧測定の嚆矢とされ,これによりHalesが最初の血圧測定者としてもcreditされることになった.
なお,Halesは植物の生理にも強い興味をもっており,1727年には『植物生理学』という著書を刊行していて,イギリスでは「植物生理学の父」とも讃えられている.
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