外科医局の午後・41
謝罪
岡崎 誠
1
1市立伊丹病院外科
pp.292
発行日 2008年2月20日
Published Date 2008/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102051
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昨年は「謝罪」ということが問題となった1年であったように思う.その代表はボクシングの「亀田問題」である.世界チャンピオン戦で次男がプロレスまがいの反則を繰り返し,神聖な世界戦を汚したというのが主な理由で,それまで一家を持ち上げていたマスコミが一斉にバッシングに転じた.マスコミというのは持ち上げるだけ持ち上げておいて,あとは真っ逆さまに落として踏みつけるという習性があり,持ち上げられ出したら気をつけねばならないらしい.謝罪にまず父親と本人が出席したが,その態度がなっていないと,またさらにバッシングが起こった.収まりがつかないので,つぎに長男が登場して涙をみせて謝罪すると,今度はかわいそうという同情も含め,一気に長男株が上昇した.この問題だけでなく,昨年は食品企業や一流料亭による賞味期限や産地などの隠蔽や改ざんが発覚し,トップが謝罪会見するのをよく見かけた.
病院をはじめとする医療現場でも最近は特に「謝罪」が大きな問題である.たとえば,術野にガーゼを置き忘れたとか血液型や薬の投与量を間違ったというような明らかな医療ミスはやはり誰が見てもとにかく「謝罪」しかないであろう.しかし,術後に縫合不全を生じて再手術になったとか,感染を生じたとか,また初診時に病気を見落としたとか誤診したとかで謝罪を要求されたら,これはなかなか謝罪する側としても抵抗があるだろうし,謝罪したらミスを認めるという結果になるのではと考えてしまうのも自然である.
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