内科医のためのリスクマネジメント 医事紛争からのフィードバック(12)【最終回】
謝罪について
長野 展久
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1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科司法医学・東京海上メディカルサービス
pp.554-558
発行日 2003年3月10日
Published Date 2003/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402102579
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予期せぬ事態の発生
われわれ医師が処方する薬剤や,侵襲的な検査,手術などの医療行為には,ほんのわずかな思い違いやちょっとした手元操作のブレによっても,患者の生命を脅かすような事態へと発展する危険性が常に内在しています.例えば抗悪性腫瘍薬の用量をひと桁勘違いしたり,週3回投与の薬剤をうっかり連日投与したり,あるいは内視鏡検査で生検した組織が「動脈壁」で大量出血したりなど,真面目な医師たちであっても巻き込まれるかもしれない医事紛争の症例は,この連載でもたびたび取り上げてきました.ところが医事紛争の報道をみた多くの医師の反応は,「自分には関係ない」,「私がそんな間違いを犯すはずがない」となりがちであり,当事者になって初めて困惑するというのが実情ではないかと思います.
こうした不幸な事態が発生した場合に,初期の対応としてどうしたらよいでしょうか.すぐに謝罪するべきでしょうか.もちろん,患者の取り違えや異型輸血,薬剤誤投与など,誰がみても明らかなミスと判断できるときには,すぐに謝罪したうえで患者が被った損害を賠償するという手続きをとるべきです.問題なのは,「自らが真面目に担当した医療行為によって,不幸にも患者が死亡ないし重度後遺障害を負ったのだけれども,これは病気のため,あるいは不可抗力である」と思いたくなるようなケースです.
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