ひとやすみ・30
はじめての手術
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.275
発行日 2008年2月20日
Published Date 2008/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102047
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- 文献概要
外科医として手術を行うようになってから早いもので31年が過ぎた.これまでに私が術者としてメスを握った手術は腹腔鏡下手術を中心に5,000例を超えている.しかし,いくら数をこなしても,手術時にはいつも緊張する.しかし,一番緊張し印象に残っているのはやはり,はじめて行った手術である.
私の卒業当時はストレート研修であり,最初から外科医として研修を受けた.そして研修1年目の7月頃からは虫垂切除術,ヘルニア修復術,痔核手術などの術者を任せられた.私が最初に執刀した患者さんは70歳代の鼠径ヘルニア症例であった.現在の人工膜を用いたヘルニア修復術と異なり,当時はBassiniやMcVayが標準術式であった.手術に備えて手術書や解剖の本を熟読し,頭のなかで手術のシミュレーションを何度も反芻した.しかし,実際に患者さんの前に立つと,頭のなかは真っ白になった.ただ先輩の指示に従い,手術を黙々とこなした.
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