外科学温故知新・30
血管外科―腹部大動脈瘤治療の歴史
笹栗 志朗
1
,
西森 秀明
1
,
福冨 敬
1
,
割石 精一郎
1
,
山本 正樹
1
Shiro SASAGURI
1
1高知大学医学部外科2
pp.75-80
発行日 2008年1月20日
Published Date 2008/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102006
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1 はじめに
腹部大動脈瘤は加齢や動脈硬化を原因とした大動脈の変性疾患である.大動脈壁には動脈圧に対抗するためにエラスティンやコラーゲン,平滑筋細胞などが含まれているが,これらが加齢とともに減少・変性することが大動脈の拡張に関連していると考えられている.その自然予後は不良で,動脈瘤は進行性に拡大し,ついには破裂に至る.わが国では司馬遼太郎らが,海外ではAlbert EinsteinやJoseph Pulitzerらが腹部大動脈瘤破裂のために亡くなっている.日本血管外科学会による血管外科手術例数調査によると,2005年には6,099例の腹部大動脈瘤手術(うち774例は破裂例)が行われている.現在,腹部大動脈瘤に対する人工血管置換術は標準術式として確立されているが,ほかの疾患の治療法と同じく,偉大なる先達の挑戦と努力の下に改良を重ね,成熟してきたものである.
本稿では,腹部大動脈瘤治療法の今日までの発展の経過を述べる.
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