外科医局の午後・39
運命の1球
岡崎 誠
1
1市立伊丹病院外科
pp.1772
発行日 2007年12月20日
Published Date 2007/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101987
- 販売していません
- 文献概要
早くも年末を迎えるが,今年の夏は猛暑であった.甲子園の高校野球大会を思い出すと,つい昨日のことのようである.決勝戦では8回の裏に満塁逆転ホームランという劇的で信じられないようなことが起こって決着した.しかしよく見ると,その前に運命の1球が投じられていた.1アウト満塁,1-3から投じられた真ん中低めの球がボールと判定されて押し出し四球となり,その後,次打者にほぼ真ん中の球を逆転満塁ホームランされたのである.私もテレビを観ていて,思わずあれはストライクだろうと思った(テレビではストライクに見えるが,すぐ後ろの審判側からはボールであったという話も伝わっている).
しかし,話はこれからである.「高校野球では試合後に負けたチームの監督が審判の判定に文句をつけてはいけないないことはわかっている.選手にもそういう教育をしてきた.しかし,自分は馘になってもかまわない,あえて言う.あれがボールなら投げる球はど真ん中しかない」と猛抗議をしたという話であり,それが当然報道され,賛否両論が起こった.負けたチームの選手や監督にとってはあれほど苦しい練習をし,やっとここまで苦労をして勝ち上がってきて,納得のいかない判定によって栄光の目前で打ち砕かれてしまった.これほど理不尽なことはないであろう.しかし,ここで少し考えて欲しい.高校野球は生活のためにしているのではない.あくまで教育ということを考えると,あれほどの最高の教育現場はなかったのではないだろうか.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.