外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・48
小児虫垂炎に夜間手術は必要か
廣瀬 龍一郎
1
Ryuichiro HIROSE
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科移植・消化器外科
pp.1742-1743
発行日 2007年12月20日
Published Date 2007/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101977
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
【小児虫垂炎手術のタイミングについての固定観念】 急性虫垂炎は小児の急性腹症の原因として最も手術頻度が高い疾患である.従来,外科医の常識としては,小児の虫垂壁は薄く病変の進行が速くて穿孔しやすいうえ,大網の発達が十分でなく汎発性腹膜炎になりやすいなどの理由から,虫垂炎が疑われる場合は「できるだけ早く」,「夜中でも」,「緊急に」手術すべきであるとされてきた.ところが実際の現場では手術室や麻酔,人員のセッティングのための待機時間を余儀なくされる.その長さは施設によって大きな違いがあり,定期手術の終了まで数時間から半日近くを待機させられることもある.また,夜間の緊急手術は病院スタッフの睡眠を妨げ,生活を損ない,有限である医療資源の疲弊を助長するという社会的な観点からも,虫垂切除術を夜中でも行うべきかどうかは大きな問題である.はたして,小児の虫垂炎は真夜中に大急ぎで手術しなければならないのだろうか.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.