外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・43
腹部手術の腹腔洗浄は必要か
安田 一弘
1
Kazuhiro YASUDA
1
1大分大学医学部第1外科
pp.934-935
発行日 2007年7月20日
Published Date 2007/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101733
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腹部手術の終了時には腹腔内汚染の有無や良性/悪性疾患にかかわらず,腹腔洗浄が行われる.通常は温生理食塩水を用いて洗浄し,手術時の汚染や凝血が除かれ洗浄液がきれいになるまで洗う.汚染物質を除くのは重要であるが,習慣的に行われていることもあり,その有用性を評価した検討は少ない.腹腔洗浄にはどのような効果があるのだろうか.腹腔洗浄によるデメリットはないのだろうか.これまでの代表的な論文を紹介しながら,腹部手術における腹腔洗浄について考える.
2005年に英国の腹部手術時の腹腔洗浄に関する現状調査が報告された.153人の一般外科医に対してアンケートを行ったところ118人(77%)から返答があり,そのうちの115人(97%)が腹腔洗浄を行っていた.洗浄の程度は,洗浄液がきれいになるまでが61%,1l以上が20%,0.5~1lが17%であった.手術の清浄度別の洗浄頻度は,汚染手術で97%,不潔手術で96%,準清潔手術で77%,清潔手術で34%,癌手術で74%であった.洗浄液の種類は,汚染手術では生理食塩水が47%,ポビドンヨード水が38%,水が9%,抗生剤入りの洗浄液が3%で,癌手術では水が36%,生理食塩水が21%,ポビドンヨード水が17%であった.また,癌手術での腹腔洗浄は上級専門医(consultant)に比べて後期研修医(registrar)で行う頻度が高かった(29% vs. 47%,p<0.05).このように,ほとんどの外科医は腹腔洗浄を行っており,洗浄の程度や洗浄液の種類は様々であった.
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