文学漫歩
―吉行淳之介(著)―『暗室』―(1973年,講談社 刊)
山中 英治
1
Yamanaka Hideharu
1
1市立岸和田市民病院外科
pp.1534
発行日 2003年11月20日
Published Date 2003/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101611
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私の実家は開業医で,かつてレントゲンフィルムを現像していた暗室がある.かくれんぼでは最適の隠れ場所だったが,酸性の薬液の匂いと,ほの暗い赤ランプが怖くて長居はできなかった.現在は物置と化して蜘蛛の巣が張り,棚には旧いホルマリン漬けの標本瓶も並んでいて,子供をお仕置きに閉じこめるには恰好の場所である.
私は現在は大人しい良い子であるが,お寺の幼稚園では先生を犬のウンコを充填した落とし穴にはめたりして,「蛇の部屋」という大蛇の襖絵の反省室に何度も入れられた.母の実家には土蔵があって,ここにも悪戯をする度に入れられたが,祖母の長持におしっこをかけるぞと言って出して貰っていた.
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