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はじめに
乳房に対する内視鏡手術は,1992年ごろより欧米の形成外科領域での豊胸術への応用から臨床応用が始まった1,2).その後,1996年ごろより乳癌手術の際の腋窩リンパ郭清を内視鏡で行ったとの報告がみられたが,その効果についてはまだ議論のあるところとなっている3).一方,乳癌手術において腫瘍切除そのものを内視鏡で行おうとする試みは,1995年Friedlanderら4)が解剖用献体を用いて実験した報告が最初であるが,臨床例での報告は1996年ごろよりわが国で始まったのが世界的にみてもおそらく最初である5~8).その後,わが国オリジナルの手術として,乳腺内視鏡手術研究会を中心に手技や器具の開発研究が続けられ,日本乳癌学会や日本内視鏡外科学会の協力により,昨年ようやく健康保険の適用となり,乳癌手術のひとつとして認知されるに至っている.
健康保険収載上,従来の乳腺部分切除術に括弧付で「内視鏡手術を含む」という形で記載されているように,乳腺内視鏡手術は独立した特殊な手術ではなく,あくまで従来から施行されてきた乳房温存手術や乳腺全摘術の一部あるいは全部の手技を内視鏡下で行おうとするものである.しかし,実際に施行する際には,特殊な器具や手技を必要とし,経験も必要であるため,乳腺外科医にはなじみにくいものもあるかもしれない.また,施設によってその適応症例や手術手技が異なっていることも導入を迷ってしまう一因となっていると思われる.
筆者らは,これまで比較的小さい腫瘍に対する乳腺部分切除術を内視鏡併用下に行う方法を研究してきた9~13).最近では,手技の簡便化,導入の容易化,ディスポーザブル器具の削減を目的として,乳輪周囲半周切開からの内視鏡併用乳腺部分切除術を行うことと,これとセンチネルリンパ節生検を組み合わせることにより美容的に良好な結果を得られるようになった.本稿では,筆者らの行っている内視鏡併用乳腺部分切除の手技を具体的に紹介する.内視鏡手術を導入しようと考えている乳腺外科医の一助となれば幸いである.
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