胃癌外科におけるリンパ節郭清の始まりとその展開・7
Mikuliczの胃癌外科とその時代(1)―理論の始まり
高橋 孝
1,2
Takashi TAKAHASHI
1,2
1たむら記念病院外科
2亀有病院
pp.1253-1258
発行日 2006年9月20日
Published Date 2006/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407101139
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【Mikuliczのリンパ節を見る「まなざし」とSappeyのリンパ流研究】
ここで言う「まなざし」とは「癌の根治の意思を念頭において“もの”を見ること」を意味します.Mikuliczは限られた術野内でどのような「まなざし」をもってリンパ節を見ていたのでしょうか.いや術中だけではありません.前回われわれはすでに,Mikuliczが肉眼癌型の重要性を把握し,それを動的に実践していたことをみてきました.術前に患者の訴えの内容を聞き腹部を触診したときから,Mikuliczの「まなざし」は胃周囲のリンパ節に注がれていたものと思います.今日われわれは,本連載第5回目に参照した103例の胃手術報告論文(1896年),本連載第6回目に挙げた1898年の外科学会講演,および1900年の外科全書中の著書によって,Mikuliczのリンパ節を見る「まなざし」を知ることができます.ほぼ2年おきの3論文からMikuliczの「まなざし」とその変化をみていきましょう.
3つの論文はそれぞれ異なった観点からリンパ節をみています.1896年論文は,胃切除か胃腸吻合かの判断に際してのリンパ節転移の重要性を述べるもので,そこにみられる根治への意思はきわめて薄いと言わざるを得ません.したがって,リンパ節を見る目は,大彎・小彎のリンパ節と胃壁外(ausserhalb der nächsten Umgebung des Magens)のリンパ節群を見分けるだけであり,それらがただそこに存在しているだけで,互いの関連性や周囲とのつながりは考慮の外におかれていました.
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