外科学温故知新・10
創傷管理
岡村 吉隆
1
Yoshitaka OKAMURA
1
1和歌山県立医科大学第1外科
pp.647-653
発行日 2006年5月20日
Published Date 2006/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100446
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1 はじめに
各地の温泉地に行けば,効能に「切り傷,火傷……」と記載されている.温泉の保温効果や新陳代謝亢進が創傷治癒を促進すると考えられるが,鶴,鷺,鹿,猿,熊など,きずついた動物が温泉発見に関与した伝説は多い.病気の歴史は人類の歴史よりはるかに古く,創傷,感染,腫瘍など,地球に生命が誕生して以来,病気の実態に変化はないとさえ言われる.5億年前の貝の化石や100万年前の恐竜などの化石に,損傷や骨折などの明らかな証拠がある.人類も歴史に登場以来,つねに敵と戦わねばならなかった状況で,しばしばきずに見舞われたことを疑う余地はない.先史人は体内の病気は神秘的な存在と考えたが,体外の病気は自明であり,手当てが可能であった.その第一段階が創傷の保護であった.創傷の治癒が自分で確認できることも大きな関心を呼んだことは間違いない.
最近,外科の各分野で話題になる低侵襲手術であるが,その条件の1つはきずの小ささである.いかに小さなきずでも低侵襲性においては薬による治療には及ばない.きずは疼痛,感染,美容など多くの問題を生む.外科医は細分化した専門領域の知識以外に,創傷管理という共通の問題に対処しなければならない.
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