特集 小外科・外来処置マニュアル
Ⅲ.頸部・肩
39.頸部腫瘤
矢吹 由香里
1
,
西川 徹
1
,
福田 護
1
Yukari YABUKI
1
1聖マリアンナ医科大学乳腺・内分泌外科
pp.127-129
発行日 2004年10月22日
Published Date 2004/10/22
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100815
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はじめに
日常の外科外来診療において遭遇する頸部に発生する腫瘤性病変は多彩で,耳鼻科領域の診療とオーバーラップするものが少なくない.解剖学的由来については一通り知っておく必要があるが,喉頭,下咽頭,甲状腺,気管,および所属するリンパ節,神経,血管などがある.また,発生学的に甲状腺や上皮小体などの遺残から発生する疾患も存在する(表1).
外来診療で遭遇する多くは頸部の腫大を主訴として来院するため,触診と外来体表エコー検査で発生部位の確認および質的診断はある程度可能である.また,外来診察の範囲内で簡単に穿刺吸引細胞診で鑑別できる場合が多い.しかし,ときに内科領域での全身検査や頸動脈病変のスクリーニングを目的として行われる頸部エコー検査や,整形外科領域疾患の精査目的で施行されたCT検査やMRI検査などの際に偶然に発見された腫瘤は比較的深部に存在するものが多く,厳密な意味での鑑別診断には全身麻酔による組織採取が必要となる場合もある.
本稿では,外科外来での小外科手術を必要とするものに関して述べる.急性化膿性甲状腺炎の原因となる梨状咽頭窩瘻の切除,正中頸嚢胞や小さな甲状腺腫瘍などは,ときに局所麻酔手術の対象となり得るが,術後の血腫の発生に留意すべきで,できればオーバーナイトでの経過観察が望ましい.現状では1泊2日程度の入院手術の対象となるため,ここでは割愛する.外来での小外科手術(生検や摘出手術など)の対象となる頸部腫瘤は,頸部脂肪腫や粉瘤などのごく表層に発生した疾患に限られる.
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