臨床外科交見室
創傷治療の歴史
岡崎 誠
1
Makoto Okazaki
1
1市立伊丹病院外科
pp.1142-1143
発行日 2005年9月20日
Published Date 2005/9/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100185
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最近,外傷や熱傷に対して消毒やガーゼを用いず,適切な創被覆材を用いた閉鎖療法が提唱されている.一方,わが国では大病院から小さな診療所に至るまで,長い間いわゆる「消毒・ガーゼ」を用いた創処置が行われている.果たして,わが国や諸外国では創傷治療の歴史はどうなのであろうか.
1955年発行の「日本外科全書」の柳1)によると,(1)創傷の自然治癒の障害となるべきものを除去し,(2)一方,何らかの方法をもってその治癒を促進せしめることに主眼を置かねばならない,と記されている.また,創面からは「創液」なるものが滲出することも記されている.創液が創口内に貯留することは必ずしも創傷の治癒を妨げるものではない.しかし,この創液が細菌のよき培養基となりえるため「ドレナージ」が考慮されねばならないと記されており,この考え方は従来の外科治療の基礎となっている.また,消毒剤に関しては,程度の差はあれ蛋白質に対し有害な作用があり濫用は厳に慎むべきと記されており,やみくもに消毒を奨励はしていない.
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