Japanese
English
特集 脳の老化
3.生理的萎縮と病的萎縮—形態学からみた脳の老化
Physiological Atrophy and Pathological Atrophy:Morphological Aspect in Brain Aging
水谷 俊雄
1
Toshio Mizutani
1
1東京都立神経病院検査科
1Department of Pathology, Tokyo Metropolitan Neurological Hospital
キーワード:
brain aging
,
morphology
,
physiological atrophy
,
pathological atrophy
,
Alzheimer's disease
Keyword:
brain aging
,
morphology
,
physiological atrophy
,
pathological atrophy
,
Alzheimer's disease
pp.573-581
発行日 1999年7月1日
Published Date 1999/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901459
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I.老化の形態学における問題
老化という言葉は学術用語から日常会話までさまざまな場面で使われるが,われわれにとって不都合な現象,できれば避けたいものという一点だけは共通している。生理的老化と病的老化という言葉の使い方や,Alzheimer型痴呆(ATD)を老化のモデルとする現在の研究方向はこのような側面と無関係ではないかもしれない。ところで,1980年代には老化の形態学的指標を標準化することによって個々人脳の老化度を評価しようとする試みが行われ,現在に至っている。しかしここで注意を喚起したいことは,当時100歳代の老人は研究対象としても非常に稀であったことである33,34)。ATDを老化の究極像として80歳代までの知見から得られる回帰直線を無理やり100歳代まで延長したかのようである。因に1992年,筆者らが100歳脳27例の形態学的所見を発表した時点でさえ,この種の論文は世界最初であった20)。そのためか,論文ではごく普通に生活されてきた人たちを記述しATDは1例もなかったにもかかわらず,生物学的に選ばれた一群というイメージをもたれた。しかし,ここ10年ほどの間に100歳代の人口が急速に増加して,もはやそのようなイメージは払拭され,100歳代はATDとはまったく違った様相を呈していることが判明したのである6,20)。
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