Japanese
English
特集 神経再生・修復をめぐって
末梢神経移植による視神経の再生と機能回復
Optic Nerve Regeneration and Functional Recovery of Vision Following Peripheral Nerve Transplant
井上 徹
1
,
福田 淳
1
Tetsu Inoue
1
,
Yutaka Fukuda
1
1大阪大学大学院医学研究科情報伝達医学専攻情報生理学講座(医学部生理学第二講座)
1Department of Physiology, Osaka University Medical School
キーワード:
axonal regelleration
,
optic nerve
,
transplant
,
peripheral nerve graft
,
functional recovery
Keyword:
axonal regelleration
,
optic nerve
,
transplant
,
peripheral nerve graft
,
functional recovery
pp.227-235
発行日 1998年3月1日
Published Date 1998/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901250
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はじめに
成体哺乳動物における網膜神経節細胞は,いったん軸索を切断されると決して軸索再生しないが,Aguayoのグループによって確立された末梢神経を自家移植する方法により,移植神経の中を通って再生することができる(図1)。さらに移植手術後,移植片の他端を視覚中枢の一つである上丘へ挿入すると,2〜3か月後には再生軸索が上丘内へ侵入し,上丘細胞と正常なシナプスを形成する(Vidal-Sanzら,1987;Carterら,1989)2,3)。この結果は,網膜-上丘を架橋移植すれば再生線維が中枢(上丘)細胞と再び機能的に連絡し得ることを強く示唆するものであった。こうした視神経再生の研究は再生現象自体を研究するだけにとどまらず,視覚伝導路の再構築という課題へ発展し,さらに視機能回復の可能性を模索する契機になった。
これら先駆的な研究は,ラットおよびハムスターというげっ歯類を用いて行われ,今でも架橋移植による視覚伝導路の再構築に関しては,これらの動物における研究が先行している。しかし網膜神経節細胞の形態分化および機能分化が進んでいないので,どのタイプの神経節細胞が軸索再生しやすいのか,再生神経節細胞がどの程度機能しているのかなど,詳細な検討には不向きである。また視覚路の機能回復に関する研究は,将来的にヒトを視野に入れた霊長類の視機能回復という課題につながるであろう。
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