マイ・オピニオン
事実を事実としてとらえ,伝えること
田中 静
1
1葛飾赤十字産院医療社会事業部
pp.1249
発行日 1979年12月1日
Published Date 1979/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661918830
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看護も福祉も,その対象とするのは常に人間であり,私たちは人間個々人の生命の充実(可能な限りの自己実現)をはかるための手助けをしているのであって,その出発点も目標も人間であることはいうまでもない.そしてこの直接人間にかかわることを仕事としていく職業人として,基本的に身につけていなくてはならない態度・処し方について,共通していえる大事なことは‘対象者(医療の場では患者や家族)を理解するには,自己の価値評価を入れないで,事実をそのまま事実としてとらえ,それをほかへも伝え,自らもそれをもとに理解していく(自己評価と事実とを混同しないで事実のみを正確に伝える)こと’にある.それをある日のナースステーションの勤務交代時の申し送りのひとこまから考察してみる.
患者はA子,女性,36歳.本人は夫と2児とから別居中.子宮筋腫手術施行.術後の経過は良好.朝の回診で主治医は‘午後からでも少しずつ歩くように.それによって退院を考えましょう’と言った.しかしA子はその後じっと天井をみるばかりで,看護婦たちが歩行を勧めても,時にはうるさがるしぐさで起きようとしない.
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