Japanese
English
総説
パーキンソン病発症候補物質
Neurotoxin Candidates as Pathogenic Agents of Parkinson's Disease
直井 信
1
,
丸山 和佳子
2
Makoto Naoi
1
1名古屋工業大学工学部共通講座
2長寿医療研究センター老化機構研究部生化学代謝室
1Department of Biosciences, Nagoya Institute of Technology
キーワード:
Parkinson's disease
,
neurotoxins
,
salsolinol
,
apoptosis
Keyword:
Parkinson's disease
,
neurotoxins
,
salsolinol
,
apoptosis
pp.793-803
発行日 1997年9月1日
Published Date 1997/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901159
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はじめに
近年わが国では高齢化にともない痴呆や運動障害を起こす神経変性疾患の頻度が増加しており,これらの病因解明と治療法の開発は社会的な課題となっている。パーキンソン病(Parkinson’s diseasee,PD)は高齢者での最も頻度が高い神経変性疾患の一つで,日本における有病率は人口10万人あたり100人以上といわれている。PDの特徴は中脳黒質に存在するドーパミン(DA)神経細胞の選択的変性であり1),神経変性疾患の中でもこのような特定の細胞のみに細胞死をきたすものは他に例がない。
黒質のDA含有細胞数は正常な加齢でも減少し,その原因として「酸化的ストレス」が挙げられている。DA細胞ではDAがモノアミン酸化酵素(monoamine oxidase,MAO)により酵素的に,あるいは自動酸化により酸化されると過酸化水素が生成され,更に鉄(II)や銅(I)が存在すると細胞毒性の高い水酸化ラジカルが生成される。一方,活性酸素種を除去する機能は加齢とともに低下する。DA神経細胞は恒常的に酸化的ストレスに曝されており,これにともなう細胞内タンパク,核酸,膜脂質などの変性が引き起こされることから細胞死に至ると考えられる。一方PDにおいてはこの「生理的な」老化の過程とは質的に異なった「病的な」細胞死が進行しているとの考えが一般となっている。
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