Japanese
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特集 難治疾患の病名告知をめぐって
病名告知をめぐる諸問題:Parkinson病
Information Giving in Parkinson's Disease
葛原 茂樹
1
Shigeki Kuzuhara
1
1三重大学医学部神経内科
1Department of Neurology, Mie University School of Medicine
キーワード:
Parkinson's disease
,
information giving
,
informed consent
,
bioethics
Keyword:
Parkinson's disease
,
information giving
,
informed consent
,
bioethics
pp.417-423
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900942
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はじめに
わが国で病名告知が最も深刻にとり上げられているのは,「がん」に関してである。これは,第1に「がん」が死に直結する疾患であるために,告知すること自体が患者に深刻な心理的反応を引き起こし,うつ反応や自殺の誘因にすらなる場合があること,第2に,手術,化学療法,放射線療法のいずれを選択するにしろ,患者への侵襲が大きい治療であるために,円滑な治療遂行のためには,患者自身が病気についてよく知り,自ら治療法を選択し,闘病する決断をするという,インフォームドコンセントが不可欠である,という理由による。
神経疾患の場合には,脳腫瘍や筋萎縮性側索硬化症など一部の病気を除くと,「がん」ほどの緊急性と深刻さをもって死と直面している疾患は少ない。しかし,神経難病といわれる神経変性疾患や脱髄性疾患の多くが,未だ原因が不明で根本的治療が確立されていないために,対症療法は成功しても病気自体は進行していくこと,進行につれて,運動・感覚・言語・嚥下・排泄など,ヒトとして生きていくために不可欠の機能が障害され,長期間の闘病生活を強いられること,最終的には寝たきり状態に陥るものが多いことなど,生命予後は悪くなくても患者にとっては深刻な病気である。しかも,神経難病が,「がん」や他の内科や外科の疾患ほどには馴染みがない疾患であることに加えて,「難病」という言葉自体が,治らない原因不明の奇病という印象を与えて,患者の不安を大きくする要因になっている。
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