Japanese
English
総説
脳疾患におけるFree Radicalの役割
Free Radicals and Neurological Disorders
横井 功
1
,
小川 紀雄
1
Isao Yokoi
1
,
Norio Ogawa
1
1岡山大学医学部分子細胞医学研究施設神経情報学部門
1Department of Neuroscience, Institute of Molecular and Cellular Medicine, Okayama University Medical School
キーワード:
brain dysfunction
,
reactive oxygen species
,
hydroxyl radical
,
superoxide
,
nitric oxide
Keyword:
brain dysfunction
,
reactive oxygen species
,
hydroxyl radical
,
superoxide
,
nitric oxide
pp.1039-1049
発行日 1995年11月1日
Published Date 1995/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900862
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はじめに
脳疾患とフリーラジカルの関係を考えるにあたって,他の臓器とは異なる脳の特殊性を考慮しなければならない。その第1は,脳のエネルギー代謝はきわめて活発で,そのエネルギー生成をほとんどグルコースの酸化的代謝に依存している,つまり酸素代謝が活発であることである。第2には,脳には神経細胞膜の不飽和脂質や神経伝達物質であるドーパミンなどの容易に酸化されやすい,換言すれば,フリーラジカルの攻撃を受けやすい物質を豊富に含有していることである。第3には,脳には神経細胞,グリア細胞,血管などのいろいろな独立した機能とそれに対応した個別の代謝系をもつ細胞が一定の相互関係と調和をもって存在しているが,神経細胞は脆弱で再生能がないことである。第4に,脳は周囲を頭蓋骨で保護されているため,脳浮腫などで頭蓋内圧が高まると,それだけで二次的影響が脳内の全ての細胞系に及ぶことである。このような理由から,フリーラジカルによる中枢神経機能の障害を考える場合,神経細胞へのフリーラジカルの直接的影響のみを考えてもあまり意味をなさず総合的な視点が必要である。
さて,1969年にスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)が発見されてから31)スーパーオキシド(O2・−)やヒドロキシルラジカル(・OH)などの活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)の研究が盛んとなった。
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