Japanese
English
特集 神経疾患治療の進歩
代謝疾患の肝移植
Liver Transplantation in Metabolic Diseases
武井 洋一
1
,
池田 修一
1
Yo-ichi Takei
1
,
Shu-ichi Ikeda
1
1信州大学医学部第三内科
1Department of Medicine (Neurology) Shinshu University School of Medicine
キーワード:
metabolic disease
,
hereditary disorder
,
liver transplantation
,
hepatic failure
Keyword:
metabolic disease
,
hereditary disorder
,
liver transplantation
,
hepatic failure
pp.633-641
発行日 1995年7月1日
Published Date 1995/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900809
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I.はじめに
1963年,Starzlらによって肝移植が始められた当時は,移植の適応は55歳以下の肝癌患者のみであった41)。その後シクロスポリンを初めとする免疫抑制剤の進歩と手術手技の向上により肝移植の適応が急速に拡大した。現在,肝移植は世界中で年間約5,000例が施行されており,そのうち米国で約3,000例,他の国々で約2,000例といわれている2,3)。こうした肝移植の主な適応疾患は小児では先天性胆道閉鎖症であり,成人では肝不全を伴う劇症肝炎,肝硬変および原発性肝癌である。しかし最近では肝硬変,肝癌とは関連のない疾患,すなわち肝における先天的な酵素欠損や異常物質の産生が原因となる代謝疾患,特に神経疾患に対する肝移植も広く行われており,全肝移植の11%から35%を代謝疾患が占めている5)。このように欧米では肝移植が代謝疾患の治療法の1つとして確立している。
一方,我が国では脳死体からの臓器移植が未だ不可能なため,肝移植を希望する患者の多くは,脳死肝移植を受けるために海外渡航を余儀なくさせられている。しかし,1990年以降本邦でも先天性胆道閉鎖症を代表とする小児の重篤な肝疾患に対して,生体部分肝移植が開始された19,50)。本移植手術は主に京都大学と信州大学で行われており,本年初めには生体部分肝移植を受けた患者数は200名を越え,また同時に良好な術後生存率が得られている。
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