学会印象記
International Symposium on Brain Imaging of Dementia
宇野 正威
1
1国立精神神経センター武蔵病院
pp.585
発行日 1993年6月1日
Published Date 1993/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406900502
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国立精神・神経センターは,厚生省の支援により昭和63年度に発足した痴呆性疾患対策推進事業の一環として,毎年一回アルツハイマー型痴呆(DAT)に関する国際シンポジウムを開催してきた(第一回「診断」,第二回「家族性アルツハイマー病」,第三回「疫学および危険因子」,第四回「痴呆の病態モデル」)。第五回の本シンポジウムは「アルツハイマー型痴呆の画像解析と病態機序」をテーマとして,平成5年3月10日(武蔵病院),11日(メトロポリタンプラザ)の2日間にわたり,国外から3名,国内から12名の研究者を招聰して,行われた。
まず,米国立老化研究所のHorwitz博士は,脳機能画像解析がDATを早期に診断するうえでの有用性を,強調した。すなわち,彼はDAT患者における皮質の糖代謝低下はその皮質部位に対応する神経心理学的機能の低下に先行すること,および燐—MRSの結果も併せて考えると,糖代謝低下は神経細胞の糖消費要求の低下を反映するとした。とくに脳の各部位間の糖代謝の相関係数とMRIによる構造変化の相関係数などの統計的解析が,発病初期を高い確率で診断可能とするとの主張は印象的であった。一方,畑澤博士(秋田県立脳血管研究センター)は,脳血流,脳酸素代謝,脳血液量の測定の結果,DATの脳機能低下は大脳基底核,中脳,脳幹にも及ぶとし,さらに病初期における脳血管の血流調節機能障害の存在を示唆した。また,坂本博士(日本医科大)は,血流量と酸素消費量の測定から,疾患の進行とともに代謝異常が側頭葉から頭頂葉と前頭葉へ拡大することを示した。
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