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I.緒言
神経線維を跳躍性または連続性(saltatory or con—tinuous)に伝導する活動電位が,特定の限局された部位で伝導不能となるが,その部位をはさむ近位部および遠位部のいずれにおいても活動電位の伝導が行われる場合に,その特定の限局された部位で神経伝導ブロック(以下伝導ブロック)が存在すると定義される20,48)。このような伝導ブロックは臨床的に極めて重要な病態で,電気生理学的にその存在が証明される。ヒトにおける伝導ブロックは,四肢の神経束において通常運動神経で認められる。伝導ブロックに対応する有髄線維の変化を観察するためには,その部位の神経線維の病理学的変化を検討しなければならないので,実際的にそのような観察は不可能である。また,特定の病変が伝導ブロックを呈する部分の生検神経線維で証明されたとしても,その部分のどの神経線維が伝導ブロックを呈していたか否かを証明することは実際的に不可能である。一方,実験動物においては,単一の有髄神経線維の伝導ブロックとその神経線維の病理学的変化を対応させて検討することが可能である。なお伝導ブロックを理解するためには,Ranvier絞輪部の構造(Fig.1),形態学的なRanvier絞輪部の観察法(Table 1)およびfreeze fracture法による軸索膜の膜内粒子の分布(Table 2)などが重要である。それ故,本稿のテーマである伝導ブロックの形態的所見については,ヒトの病態とその動物モデルにおける病態の比較検討によって蓄積された知見および成績に基づくものが多い。なお,伝導ブロックは中枢および末梢両神経系に生じ,いずれの系においてもその発現機序および形態的背景は基本的に同一と判断されている。その詳細な実験的検討は,それが比較的容易な末梢神経および神経根で行われることが多い。臨床的に伝導ブロックが生じる可能性のある中枢および末梢神経障害患者の電気生理学的検査および診療に際し,伝導ブロックに対応した有髄線維の形態的背景を十分に理解していることは重要である。
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