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編集後記
高倉 公朋
pp.639
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206343
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- 文献概要
神経系疾患治療の一つの大きな目的が,神経機能の保存,または障害を受けた機能の回復にあることは論を待たないが,その方向に向かっての診療体系の整備や神経再生研究の流れが着々と進んでいるという感じを受けるのが昨今の印象である。東北大学の中村隆一先生に"restorative neurology"という新しい領域についての総説を頂いたのも時宜を得た企画であると思う。本誌の研究欄に掲載されている,大阪大学,山田和雄先生の"脳虚血巣周囲組織に出現する神経栄養因子"の研究も,神経再生研究の重要な課題の一つである。
神経機能の再生を目指すには,神経栄養因子などを含めた分子レベル,または細胞レベルでの研究と共に,組織レベルでの神経系の再構築や,さらにリハビリテーションなどを中心とした臨床レベルでの治療と研究体制の整備が必要で,そのいずれもが重要なテーマである。しかし,それぞれの分野は,今日の段階では未だに隔絶した領域のように離れているのが現状であろう。窮極的には,神経機能の回復に寄与する本来の目的に向かって,それぞれの研究成果が,互いに貢献しあうようになることと思われる。
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