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編集後記
高倉 公朋
pp.891
発行日 1988年9月1日
Published Date 1988/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206180
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- 文献概要
本号の特集には,脳腫瘍の病因が取りあげられている。脳腫瘍の発生原因については,ごく最近迄研究はあまり進んでいなかったように思われる。しかし,この分野の研究は,今後10年間に著しく進展することが期待される。本特集では,わが国の脳腫瘍の統計を基礎的な現状分析として,脳腫瘍の発癌遺伝子,ウイルス発癌,phakomatosisにおける遺伝子異常について解説されている。
わが国の脳腫瘍全国集計調査は,すでに約3万例の症例が集積・解析されているが,その症例数と予後調査の正確さにおいて,世界に誇れる統計となっている。この統計調査を考えると,日本の脳神経外科医が極めて協力的であることがよくわかる。国立がんセンターの野村和弘先生の御努力と,大型コンピューターの解析能力に負うところが大きい。これだけ多数の症例が集積されてくると,さまざまな疫学的解析も可能になってくる。例えば髄芽腫の発症年齢の分布から,理論疫学的に病因と考えられるウイルス感染を起こした時期を推定することも可能になってくる。単なる統計を越えて脳腫瘍の病因を明らかにする情報が秘められていると言ってもよいであろう。
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