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編集後記
高倉 公朋
pp.211
発行日 1986年2月1日
Published Date 1986/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205667
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- 文献概要
21世紀の展望がいろいろと話題にのぼる昨今であるが,年が改まって1986年を迎え,今世紀もあと15年間かと思うと,今や20世紀末に入ったという実感が湧いてくる。21世紀は神経科学の時代であろうとも言われているが,そのはしりは既に始まっており,これから15年の闇にも,一段の飛躍がありそうに思う。
1970年代にX線CTが導入されて,神経学の考え方も革命的な変貌を遂げたことは周知の事実だが,1980年代にはMRIが登場し,今日既にX線CTを陵駕する画像情報を提供しており,近い将来神経系疾患の基本的検査法としてX線CTにとって代ると予想される。5年後にはMRI,PET等の検査法は形態学的診断のみならず,生化学的または代謝的検査を幅広く可能にして,臨床神経学に大きな役割を示すようになってくるであろう。脳代謝の検査が容易にできるようになれば,神経科学の発展は飛躍的に進むであろう。コンピューターの技術が進歩するにつれて,新しい科学技術の開発が加速されてくるので,過去10年間の進歩は1年で達成され,その期間は1カ月となり,やがて1週間…と縮まってくるのであろうか。遺伝子工学に目を向ければ,これまた目覚しい発展ぶりで,例えば成長ホルモンの構造が解明されたのがつい20年前のことなのに,今日ではその大量生産が可能になっている。これらは最近の医学のごく一部の進歩に過ぎないが,このような科学技術の急速な発展をみていると,これからの神経科学の展開には,個個の技術の進歩もさることながら,今迄以上に全体の流れを把握する展望力,または未来学的思想が強く求められるであろう。
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