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第41巻第5号をおとどけする。本号は「頭部感覚器の形態と機能」の特集号として網膜と内耳について執筆頂いた。嗅器,視器,内耳は頭部三大感覚器といわれ,本特集に嗅器をはずすわけにはゆかない。嗅器については執筆者のやむをえない事情から本号に間に合わなかったことを深くお詫び申し上げる。いずれ機会をみて改めて考慮したい。近頃のように研究対象が細分化され,研究方法も多様化して論文の数も増えてくると,折々に内容の濃い総説が益々必要となってくる。本号のために研究の時間を割いて執筆頂いた先生に心から御礼申し上げる。
嗅・視・聴・味・触覚は古くから五感とよばれる。このうちはじめの4種の感覚は特殊感覚とよばれて,その感覚器は頭部に集中する。さらに,刺激源の遠近によって遠感覚と近感覚とを区別する場合があり,遠感覚は嗅・視・聴の3種だけで,その感覚器はすべて頭部にある。このように感覚器だけからみても頭部は特異な部分であるらしい。人体解剖書には,人体の外見上の区分として頭部・体幹・体肢として頭部を最初から独立させることが多い。しかし体幹(広義)・体肢の区分から出発する解剖書もないわけではない。頭部を一次区分とみるか二次区分とみるかは,前世紀から解剖の課題とされる「頭部問題」Kopfproblemにかかわりあいが深い。これは,頭部に分節制はあるか,あるとすればそれは体幹の分節制と相同か,その数はいくつかの3点を具体的問題とする。体幹の分節制は体節somiteによる体節分節だけであるが,頭部には体節分節と鰓節分節とが併存する。頭部の2種の分節のあいだに対応関係があるかについて解剖学はまだ解答を与えていない。体節分節からみると頭部の一部分は体幹(狭義)の延長とみてよさそうである。
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