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編集後記
金光 晟
pp.489
発行日 1987年5月1日
Published Date 1987/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205911
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第39巻第5号をおとどけする。本号はご覧のように「末梢神経系の形態」をテーマとして特集した。今日の神経解剖学の教科書は神経系を体性系と臓性系(自律系)の2大機能系列に区分して記述するが,これがGaskell (1889)をはじめとする一連の末梢神経系の機能解剖学的研究に負うことは余り知られてないようである。さらに,これらの研究によって末梢神経の起始核・終止核の配列が整理され,中枢・末梢神経系を通して神経系が伝導路の複合体として理解できるようになったことは,ニューロン説の確立と同じ程度に特記されてよい。
このように末梢神経系は中枢神経系の基盤であるとともに,一般解剖学との接点として大きな意義をもつ。従来,一般解剖学と神経解剖学とは研究面で余りにも分化し過ぎたきらいがあったように思う。前世紀から今世紀にかけてGegenbaur(1826-1903)を始祖とするJena-Heidelberg学派は比較解剖学に多大な影響を与えたといわれる。そして末梢神経の配列・走向・分岐様式を指標として筋系を系統化する作業は今日なお続けられていると聞く。標的器官と直接に連結する末梢神経系の形態には動物の体制を多分に反映あるいは示唆するらしい。「原型」あるいは「類型」といった指導概念によってもたらされた動物の体制の解釈に対しては専門家の間でも評価は分れるようである。しかし,これらの研究が残した古典的所見の情報自体が平易にまとまった形で神経研究者の目に触れるようになっていないこともまた確かなことである。
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