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編集後記
金光 晟
pp.903
発行日 1986年9月1日
Published Date 1986/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205780
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第38巻9号をおとどけする。本号は「感覚神経路の多重性」を形態学の面からとりあげて特集とした。昨年4月福岡市で催された第90回日本解剖学会総会において京都大学水野昇教授がこのテーマでシンポジウムを主催された。このシンポジウムの内容をとくに印刷する予定はないと伺い,本誌でこのテーマをとりあげることについて同教授のこ諒解を頂いた。その際,本誌の特集は執筆者が3〜4人と比較的小規模なこともあって,執筆者の選択依頼については当方に一任させて頂いた。本号の特集は以上のような経緯で生れた。水野教授には厚く御礼申し上げる。「多重性」という用語が耳新しい読者もおられると思って熊本大学川村祥介教授に解説をお願いした。なお,本誌第34巻11号には同教授の総説「視覚路:膝状体系と非膝状体系」がある。本号の特集とともに併読されることをとくにおすすめしたい。いそがしい研究活動の最中に本誌のために時間をさいて執筆して下さった先生方に心から御礼申し上げる。
昨今では形態をみる手段が豊富になり,しかもその手段がもはや解剖学の専用でないことは前回の編集後記で触れた。研究人口の増加と技術開発によって神経解剖学に関する新知見はかつてない急テンポで増えつつある。したがって,これらの形態学的新知見とそれから生じた問題点を平易に記述して適宜広い読者に提供することはこれから益々必要であろうと思う。解剖学が充実した時期に医学は進歩したとかつて聞いたことがある。小生は医史学に無知でこの事の真偽のほどについて全く暗いのであるが,本号のささやかな形態学の特集が他の研究分野の先生方にも楽しく読んで頂けることを祈ってやまない。
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