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第39巻11号をおとどけする。本号は東京医科歯科大学佐々木助教授に綜説として「アストロサイトの形態学」を頂いた。今日までの研究の流れと問題点に触れ,さらに数多くの自己所見をも提示して下さったことに厚く御礼申し上げる。グリアは一般になじみが薄く,神経解剖学の成書にも触れるところが少ないようである。研究人口もニューロンを対象とする研究者よりずっと少ないであろう。本邦においては,「Morphology of Neu-roglia」(J. Nakai, ed., 1963),「神経グリア」(辻山義光編,1977)などの単行本が医学書院から出版されており,最近の「神経研究の進歩」誌の第27巻1号(1983)は「神経グリア」の特集号となっている。洋書としては,簡にして要を得たP.Gleesの「Neuroglia」(Blackwell, 1955)があり,MöllendorfのHandbuch第4巻10分冊(1980)は「Neuroglia I」となって840頁の分量である。さらに近々アメリカではグリア専門の研究誌が発刊されると聞く。少数の研究者によってグリア研究はたゆみなく続けられてきたわけで,本誌綜説でその一端でもうかがい頂ければ幸いである。
本誌はこれまで特集や綜説の一部によって基礎サイドの情報を提供してきた。本誌の読者の大部分が臨床分野で活動しておられることを思い合わせると,このような基礎的情報がお役に立つのかいつも気になることである。神経解剖学に従事してみて解剖学が臨床神経学に負うところが大きいことは常日頃感じるところである。例えばJ.Déjérineの「症候学」(1914)には顔面皮膚は口裂を中心にしてほぼ同じ円状の分節性をもって神経支配されると説いている。このことは末梢神経は体軸に垂直な分節性をもって末梢を支配することが頭部においても当てはまることを示して貴重であろう。また触圧覚が後索上内側毛帯路のみならず脊髄視床路によっても伝導されるであろうことを示唆したのはスウェーデンの内科医K.Petrén(1910)といわれる。臨床検査方法は往時に較べて格段に改良されていると聞く。基礎サイドとしては臨床症状のきめ細かな観察と解析が待たれるのである。
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