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今回,岡崎春雄教授,ならびにScheithauer教授の共著によるAtlasof Neuropathoiogyが,Lippincott社から出版され,拝見する機会を得た。既に数年前,岡崎教授の著書として"Fundamentals of Neuro-pathoiogy"が医学書院から出版されており,特に臨床に従事する医師の神経病理勉学にとって極めて有用な書として定評があったが,今回それが更に充実して,図もすべてカラー写真に代えられ,またそのほか新しいものも多数補われて,素晴らしいAtlasに一新され出版された。内容の記述や説明についても簡にして要を得ており,メイヨークリニックでの貴重な標本を図版として豊富に取り入れ,神経病理学の基礎を教示されており,若き学徒をはじめ,更には専門的な立場にある中堅以上の医師にとっても最新の知識を与えられて益するところ大なるものがあると思われる。神経病理学には多くの教科書があるが,詳細な記述は学問上の性質から必要であるにせよ初心者にとってはなじみ難い場合が少なくなく,修得にしばしば困難を感ずる学問の一つでもある。その理由の一つに,疾患の最終段階での形態学的な記述が中心であるため,臨床家としては何か固定したものについての細かい知識であるかのように感じられることなどを挙げることが出来よう。
今回出版されたこのAtlasについて申すなら,カラー写真の印刷も極めて鮮明で,どの頁でも気軽に開いてみたくなるような,また興味があれば,その前後の部分を続み,知識を精緻にし得る可能性を予感せしめるようなムードを持っているように思う。岡崎教授は,Neurologistの御経験もあり,臨床の立場を充分に理解して居られること,また神経病理学がその記載において有機的な内容となるには臨床的なデーターを不可欠とするというお考えを強くお持ちであるだけに,組織の写真に混じって神経病理学の書としては異例とも言えるレントゲン写真,CTなどを加えて居られることなど,この精神が本書の随所にでていることもうなずけるところである。
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