連載 症候学メモ・35
Villaret症候群と副神経障害
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.1162
発行日 1987年12月1日
Published Date 1987/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206027
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◆Villaret (ヴィラレ)症候群には副神経障害を伴うか否かが問題となっている,という話を聞いた。この症候群は書物には図式的にIX,X,XI,XIIの脳神経と頸部交感神経の障害から成ると書かれている。しかし,問題は,ある著者は本症候群をIX,X,XII脳神経麻痺とし(XIと交感神経麻痺を含まない),ある人達はIX,X,XI,XII脳神経麻痺とし(Sicard-Collet症候群と同じもの),そしてまた別の人達は前記の障害を全て備えたものであるとし,定義にずれがあるということである。
◆これらのことを聞いて感じたことは,ある人達はコンピューターのボタンを押すとポンと答えが出る式に神経症候学をとらえているのではなかろうか,ということである。駅で座席を予約するとき,いくつかのキーを係の人が押している。そして最後のボタンを押すと印刷された切符が出て来る。これは,人間がそのような仕組になるように造った機械を使うから,そのように単純な解答(切符〉がでるのであって,ヒトの体の構造は自然が造ったもので,もっと複雑である。それ故に,神経症候学のも少し深いところを理解しようとしなければ,上記のような問題は空しい論議に過ぎなくなる。
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