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I.はじめに
運動の制御,調節というと引き合いに出されるのがAllenとTsukahara1)によって提唱されたモデルである。この中で大脳基底核は外側小脳(歯状核とそれに連絡する小脳半球の外側部)と共に運動のプラン,プログラムの形成に与るものとされている。ある行動を起こすためにさまざまな運動が組み合わされることになるが,これら個々の運動をプログラムと定義し,これら個別の運動をどのように組み合わせ,あるいは個別に遂行させるかということをプラニングという言葉で表すと,大脳基底核はこのプラニングに関与すると考えられている114)。これに加えて運動を行う上で情動の影響が無視できない,すなわち辺縁系からの働きかけがある筈であるとする考えがあり,それが基底核に密接に関係するとされている75)。このような生理学的,行動学的な背景になる形態学上の知見を線維連絡の観点から眺めてみることにする。近年基底核に関する総説は枚挙に暇が無いくらい発表されているが,その幾つかを挙げておく16,24,27,61,62,66,69,70,73)。
大脳基底核とは形態学的には終脳に属する皮質下の細胞群を指すことになり,線条体(尾状核と被殻),淡蒼球,前障,扁桃体,さらに最近コリン作動性ニューロンの集団が注目を集めている前脳基底部の無名質やその周辺の核などが含まれることになる。しかし現時点では運動機能に関与する神経回路を構成するものとして上記の線条体,淡蒼球に加えて腹側視床の視床下核,中脳被蓋の黒質を合わせて考えるのが慣例となっている。今ここで述べた神経回路の中心となるのは大脳皮質—線条体—(淡蒼球内節,黒質)—視床—大脳皮質であって,淡蒼球外節や視床下核はこの途中に割り込むようにしてこの回路を修飾しているものと考えることができる。図1にはその中心となる回路に皮質—脊髄路を併せて示してある。
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