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あとがき
大橋 博司
pp.511
発行日 1984年5月1日
Published Date 1984/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205323
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北国の読渚には笑われるかも知れないが,今年の冬は本当に寒かった。京都も四月に入ってやっと春めいて来たというところである。
昔の医家は季節の移り変りにはずい分と敏感に気をくばったようだ。ヒッポクラテス集典の「流行病」の章には,必ずといってよいほどその年々の気象状況が記されている。「……タソス島では,秋のはじめに時期はずれの嵐が襲い,急に激しい北風と南風を伴って雨がどっと降り出した。……冬には北風,多量の激しい豪雨,降雪。概して晴れと曇りとが交替した。……だが冬至の直後,いっも西風が吹きはじめる時期になって,きびしい晩冬の訪れとなり,北風が多く,雪と多量の雨が続き,空は荒れ模様で雲にとざされていた。この気象が続いて,春分まで去らなかった。春は寒く,北風,雨が多く,曇りがち…云々」(拙訳)
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