Japanese
English
特集 自律神経機能の新しい臨床検査法
消化器系自律神経機能検査法
Autonomic Nerve-Function Tests of Digestive Organs
後藤 由夫
1
,
長崎 明男
1
Yoshio Goto
1
,
Akio Nagasaki
1
1東北大学医学部第3内科
1Third Department of Internal Medicine,Tohoku University School of Medicine
pp.441-452
発行日 1984年5月1日
Published Date 1984/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205314
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はじめに
神経系は外部からまた体内におこった刺激を中枢に伝え,これに対して中枢が興奮し,その興奮を身体の各部に伝える作川をもっている。末梢神経系の1つである自律神経系は,交感神経系と副交感神経系に区別され,主に内臓,分泌腺,血管などに分布して,その運動や分泌を調節している。両神経系は正常では均衡を保った相反(拮抗)する形で働いている。例えば,副交感神経系の興奮は平滑筋の収縮や消化液の分泌を促すのに対し,交感神経系は抑制的に働く。また消化管壁には内輪筋と外縦筋との間にAuerbach ptexus (アウエルバッハ神経叢)と粘膜下層にMeissner plexus (マイスネル神経叢)の2つの神経節細胞が存在し消化管の自律性に重要な役割を果たしている。
その消化器の3つの主な機能である分泌,吸収,運動の中で,分泌と運動は自律神経により強く調節されている。とくに運動機能は他機能に比べて異常が現われた場合,難治性の頑固な症状(例えば,食欲不振,悪心,嘔吐,嚥下困難,胸やけ,下痢,便秘,腹部膨満,ダンピング症状などの自律神経症状)を訴えることが多く,日常の臨床で,器質的な疾患との鑑別に苦濾することが少なくない。したがって,隈能的疾患を診断する検査法が重要となってくる。とくに自律神経症状をもつ消化器系疾患の診断の重要性は言うまでもない。しかし,現在,消化器系疾患にのみ特異的な自律神経機能検査法はなく,上述の自律紳経症状を参汚にして,生化学検査,レントゲン検査,内視鏡検査や超音波検査などにより,器質的疾患の存在を否定した上で,消化管機能検査を行ない,自律神経系との関連を検討しているのが現状と言える。
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