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医学的検査のうちで体温測定は,もっとも基礎的で歴史が古く,普遍的なものである。しかしいろいろの環境下での体温調節機構などをめぐる諸問題は方法論の開発も含めて未だ課題が尽きることはない。1960年代頃から,メディカル・エレクトロニクスの発達により熱電装置や,放射温度計による体温測定が考案されてきた。しかしこれらの方法は何れも人体のある一部の温度しか測定できず,生体情報としては"点"測定であって研究または臨床的高度の要求には不完全をまぬがれ得なかった。ところが最近1970年代に至り,赤外放射温度計の装置によって人体(物体)表面のheat mapが静的,動的に得られるに至り,この分野における大きな変革がなされるに至った。この装置と原理の概略1)は次のごとくである。温度が絶対零度(−237℃)以上あれば,どんな物質でも自ら,そのスペクトルは0.75μmから約1000μmの中間で,即ち可視光線とマイクロ波の間にある。物休が自然に放射しているこの赤外線を直接物体に接することなくスキャンニングして,その強度を検出し,温度測定に変換したのがサーモグラフィである。この原理と装置は広く航空宇宙科学から工業分野,そして医学の分野で応用されるに至った。1970年にAmerican Ther—mographic Society (ATS)がアメリカ心臓学会と同じ場所で小さく催されて以来,ヨーロッパでも1974年に第1回の会合があり,日本医用サーモグラフィ研究会も1975年には策7回で,1976年は国際学会の形式で開催された。現在の段階ではこの装置は内外数杜でそれぞれの特長を持って発売されている。本装置はルーチンの医療機材というよりはむしろ一部の研究分野,とくに自律神経研究者で活川されている現状にある。しかし科学技術の進歩は急速であり,画像処理の手法が組込まれ,いわゆるマイクロコンピューターの発達は,一層メディカル・サーモグラフィ法を改良進展の方向にむけている。本装置は昭和56年7月より,医療上法的に健康保険の採用が認められ,現在国内に300台前後設置されているものと推定される。
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