Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
When the normal composition of the brainshall be known to the uttermost item, thenpathology can begin its search for abnormalcompounds or derangements of quantities. −Thundicum, J.L.W.,1884- 神経化学の父といわれるThundicum63)がこの言葉を残してから,本年は丁度100年目に当る。この言葉通り脳腫瘍の生物化学的特性を明らかにしようと思えば,正常脳の化学的特性を知り尽くすことが必要であろうが,実際に私共はそれ程多くのことを知っているわけではない。
脳腫瘍の生物化学的研究は,組織化学的研究から始められた。Raspail39)はすでに1825年に脳腫瘍細胞中にglycogenが存在することを発表したが,初期の研究は主にpolysaccharideの変化を追求したものであった。1930年にWarburg71)が"癌の代謝"という有名な論文を発表して以来,細胞の解糖系が注目され,脳腫瘍においても解糖系に関する酵素の研究が広く進められることになった。一方,正常脳と異なる脳腫瘍細胞に特異的な物質を探り出そうとする努力も始まった。Siris54)は1936年にglioblastomaのアルコール抽出成分を抗原として抗体を作ったが,これが脳または脳腫瘍特異抗原検索のはしりであった。その後半世紀を経過したが,脳腫瘍に真に特異的な物質の発見は今日のmonoclomal抗体の出現までは成功していなかったといえる。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.