Japanese
English
総説
脳腫瘍の免疫
Immunology of brain tumors
高倉 公朋
1
Kintomo Takakura
1
1国立がんセンター脳神経外科
1National Cancer Center Hospital, Department of Neurosurgery
pp.525-537
発行日 1976年6月1日
Published Date 1976/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203889
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
医学生物学の分野における免疫学の最近の進歩はめざましい。生物の複雑な機構が秩序正しく,その機能を発揮するためには,一個一個の細胞の独立性と,それぞれの機能の間のhomeostasisが保たれていなくてはならないが,その調節の役割を果す重要な機構の1つに免疫機構をあげることが出来よう。脳が複雑な神経機能を秩序正しく発揮するためにも同様に,それぞれの細胞間のhomeostasisが保たれていなければならないが,この組織中に異物である腫瘍細胞が発生,生長した場合,生体は免疫学的監視機構によって,どのようにこれを防禦し,かつ正常な神経機能を維持しようとしているのであろうか。脳腫瘍の免疫学的治療を考える場合にも,常に正常脳の機能と免疫機構のhomeostasisが保たれるように進めていくことが基本的に重要な点であろう。今日脳腫瘍の免疫学的治療法は,手術をはじめとする一般的手段に加える補助療法として位置づけられるべきものであるが,より良い治療を求める放射線,化学療法も,腫瘍の生長が腫瘍組織または生体全体としての強力な免疫学的抑制力によつて支配されていることを無視しては,その進歩は期待出来ないであろう。がんに対する免疫学的治療の研究が80年の歴史を持つのに対して,脳腫瘍への応用はBloom (1960)2)による自己免疫の報告からわずかに15年の歴史を持つているに過ぎない。ここでは治療を対象とした脳腫瘍の免疫について,そのたどつた道程と現況を概説したいと思う。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.